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「翠勝」を手にする渕田嘉助さん=2025年9月4日、熊本県球磨村、今村建二撮影

 2020年の熊本豪雨で球磨川からの濁流にのまれ、壊滅的な被害にあいながらも再興を果たした蔵元「渕田酒造本店」(熊本県球磨村)の新しい酒蔵で初めて仕込んだ球磨焼酎「翠勝(すいしょう)」が完成した。地元産の良質の米が原料で、やわらかい風味に仕上がったという。村の復興は道半ばだが、ふるさと納税の返礼品にも加えることで、全国からの支援を期待する。

 「まったく新しい蔵での初めての焼酎造りで、どんな発酵をするのかも手探りだったが、いい焼酎に仕上がりました」

 9月4日、村の関係者が集まってのお披露目の席で、「乾杯」の発声をした後、渕田酒造本店7代目の渕田嘉助さん(77)は満足げに語った。「のどごしがグッとくる『濃さ』がある。ぜひ、そこを楽しんでもらいたい」

 JR肥薩線の線路脇、一勝地(いっしょうち)駅近くにある蔵は、豪雨で2階近くまで水につかった。麴(こうじ)室など多くの製造設備が壊れた。蔵の柱や壁に染みついた「蔵つき酵母」も流された。

 それでも渕田さんは「自分に…

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